前遠後近置閏法という置閏法

2021年2月26日

望月治先生が提唱した「前遠後近置閏法」について、尾島碩聞の「方鑑大成」の中に以下の様な記述がありますので掲載します。自分の中では結構な発見です。

日家九星置閏ノ法

日家九星ハ冬至、夏至甲子ノ日ヲ以テ陽遁、陰遁ヲ起シ三百六十日ニテ循環シ、竟(オワ)ル。然ルニ一年ハ三百六十五日四分ノ一弱ニシテ、周帀(ヒトメグリ)シ竟ル者ナレバ、甲子ノ日ハ、冬夏二至ノ気節ヨリ進ムコト一箇年間ニ凡ソ五日四分ノ一弱ナリ。故ニ、年ヲ積ニ従ヒ、若干ノ剰余ヲ生ズルヲ以テ、甲午ノ日冬夏至ニ當ルノ年ハ閏ヲ置テ、補ハザレレバ、気節ト相伴フコト能ハズ。然ルニ諸家ノ置閏法ハ、互イニ牴牾(テイゴ)ヲナシ、世人ヲシテ殆ド隔靴ノ歎ヲ免レザラシム。奇門家ニ於イテハ協紀辨方書奇門三元置閏ノ例ニ傚(ナラ)ヒ、冬夏二至ノ日ニ至リ、甲子、己卯、甲午、己酉ノ日ノ遠近ヲ計リ、正授超神閏奇接気ノ例ニ因リ、一白ヲ起コシ、置閏ノ法ヲ得タリトス。然レドモ、此ノ説ハ非ナリ。必ズ、初学ノ士ヲ誤ラン。夫レ日家九星ハ六十日、即チ、六十干支ヲ以テ一元トス。而テ、奇門家ノ置閏法ハ、時ノ干支ヨリ算起シ、五日ニテ六十干支ヲ盡(ツク)シ、之ヲ一元トナシ、十五日ヲ以テ上中下ノ三元トナス。皆二十四節ニ因テ甲己ヲ以テ符首ヲ起コシ、甲子、己卯、甲午、己酉ノ日ヲ上元トシ、己巳、甲申、己亥、甲寅ノ日ヲ中元トシ、甲戌、己丑、甲辰、己未ノ日ヲ下元トス。此ノ如ク、十五日三元ノ法ヲ引テ、百八十日三元ノ法ニ比較スルトキハ、恰(アタカ)モ十二分ノ一ツニ當ルナリ。然ルニ、強イテ之ヲ取リ、日家九星ニ推及(スイキュウ)シテ、甲子、己卯、甲午、己酉ノ日ニ一白ヲ起スハ、誤解ト謂フベシ。

五種秘竅ニ云ク、冬至ニ交ワル前後甲子ヲ上元ト為シ、一白ヲ起ス。夏至ニ交ワル前後甲子ヲ上元ト為シ、九紫ヲ起ス。トアリ、前後甲子トハ、冬至、夏至ニ近キ甲子ノ日ナリ。二至ニ近キ甲子ノ日ヨリ上元ノ一白或ハ上元ノ九紫ヲ起ス。此レヲ正法ト為ス。其ノ例左ノ如シ。

冬夏二至前後甲子ノ日ノ遠近ヲ計リ、前ニ遠ク、後ニ近キハ前ノ甲子ノ日ヨリ六十日ノ閏ヲ置テ、甲子ノ日ヲ以テ之ヲ改ム。例(タメ)セバ、冬夏二至ニ甲午ノ日相ヒ當ルトキハ、前ノ甲子ノ日ハ三十日後ノ甲子ノ日ハ、二十九日ノ隔タリトナル。是レ前遠後近置閏ノ法ナリ。

冬至ニ閏ヲ置クニハ、六十日ノ内、上三十日ヲ陰遁ニ連布シ、下三十日ヲ陽遁ニ連布ス。故ニ、前ノ甲子ノ日九紫ヲ起シ、陰遁ノ例ニ傚ヒ逆行シ、癸巳ノ日七赤トナル。其ノ翌甲午ノ日再ビ七赤ヲ起シ、陽遁ノ例ニ傚ヒ、順行シテ癸亥ノ日九紫トナル。此ノ六十日ヲ以テ閏トス。其ノ翌甲子ノ日陽遁一白ヲ起シ、順行スルモノナリ。

夏至ニ閏ヲ置クモ、冬至ノ法ト同ク唯其ノ順逆ヲ異ニスルノミ。前ノ甲子ノ日一白ヲ起シ、順行シテ、癸巳ノ日三碧トナル。其ノ翌甲午ノ日再ビ三碧ヲ起シ、逆行シテ癸亥ノ日一白トナル。其ノ翌甲子ノ日陰遁九紫ヲ起シ、逆行スルモノナリ。

以上置閏ノ法ハ、古来方鑑家ノ槩(オオ)ムネ秘スル所タリ。後学ノ多岐ニ惑フ全ク此レガ為メナリトス。世ノ家傳秘訣ト称スル者、其ノ弊往々此ノ如シ。予因テ、之レヲ世ニ公ケニシ、復タ帳中ニ秘セザルナリ。

和訳
日家九星置閏の法

日家九星は、冬至、夏至の甲子の日を以て陽遁、陰遁を起し、三百六十日にて循環し、終わる。それなのに一年は、三百六十五日と四分の一弱で、一順して終わるので、甲子の日は、冬夏二至の気節より進むこと一年間に、凡そ五日と四分の一弱となる。だから、年を積むに従い、若干の剰余を生じるので、甲午の日が冬夏至に当たる年は、閏を置いて、補はなければ、気節と共に伴うことが出来ない。それなのに諸家の置閏法は、互いにつじつまがあわず、世人をして殆ど思い通りに行かない。奇門家においては、「協紀辨方書」奇門三元置閏の例にならい、冬夏二至の日に至り、甲子、己卯、甲午、己酉の日の遠近を計り、正授超神閏奇接気の例により、一白を起こし、置閏の法を得ようとする。しかしながら、この説ではうまくいかない。必ず、初学の士を誤らせる。そもそも日家九星は、六十日、即ち、六十干支で一元とする。しかし、奇門家の置閏法は、時の干支より算起し、五日で六十干支を終わらせ、これを一元として、十五日で上中下の三元とする。皆二十四節により、甲己で符首を起こし、甲子、己卯、甲午、己酉の日を上元とし、己巳、甲申、己亥、甲寅の日を中元とし、甲戌、己丑、甲辰、己未の日を下元とする。この様に、十五日三元の法と、百八十日三元の法を比較すると、あたかも十二分の一に当たる様に見える。しかし、強いてこの法によって、日家九星行きわたらせて、甲子、己卯、甲午、己酉の日に一白を起こすのは、誤解と言える。

五種秘竅に云く、「冬至に交わる前後の甲子を上元と為し、一白を起す。夏至に交わる前後の甲子を上元と為し、九紫を起こす。」とあり、前後の甲子とは、冬至、夏至に近い甲子の日である。二至に近い甲子の日より上元の一白あるいは、上元の九紫を起こす。これを正法とする。その例は左の通り。

冬夏二至の前後の甲子の日の遠近を計り、前に遠く、後に近い場合には、前の甲子の日より六十日の閏を置いて、甲子の日でこれを改める。例えば、冬夏二至に甲午の日が当たる時は、前の甲子の日は三十日、後の甲子の日は、二十九日の差となる。これが「前遠後近置閏の法」である。

冬至に閏を置くには、六十日の内、上三十日を陰遁に続けて配置し、下三十日を陽遁の前に配置する。だから、前の甲子の日に九紫を起こして陰遁の例にならって逆行すると、癸巳の日は七赤となる。そしてその翌日の甲午の日は、再び七赤を起こして陽遁の例にならって、順行すると癸亥の日は九紫となる。この六十日を閏とする。そしてその翌日の甲子の日は陽遁一白を起こし順行するのである。

夏至に閏を置くのも、冬至の法と同じで、ただその順逆を変えるだけである。前の甲子の日に一白を起こして順行すると、癸巳の日は三碧となる。そしてその翌日の甲午の日は再び三碧を起こし逆行すると癸亥の日は一白となる。そしてその翌日の甲子の日は陰遁九紫を起こし逆行するのである。

以上置閏の法は、古来より方鑑家の大半が秘密にするところである。後学の者が多方面でどうして良いかわからなくなるのは、全くこのためである。世の家伝秘訣と言われているものは、そのよくない習慣は、大体はこの通りである。私によって、これを世間に公開して、再び奥深くしまい込むことはしない。


昔の人は、本当に勉強していて、頭が下がります。別のことを調べていてひょんなことから発見しました。結局元、は五種秘竅なんですね。