九星のもう一つのルーツ

2021年2月26日

最近、ひょんなことから、プリントを戴いて、それから色々と調べているのですが、「三國相傳隂陽輨轄簠簋内傳金烏玉兎集」という昔の本がありまして、いわゆる安倍清明が書いたとされている暦に関する本の中に「九図之名義」というものが載っています。
(本当は作者不詳の様ですが・・・)
そしてそれを後の人たちが色々と解釈をした文献(江戸時代のもの)が残ってまして、その中の一枚を戴いてそれをあらかた私の占い仲間の一人が読み解いたのですが、それで私も少し興味をもったので、それから他の文献もいくつか調べています。
尚、現代語訳されている最近の「占術奥義 安倍清明 簠簋内傳 現代語訳総解説」藤巻一保著には、残念ながらこの部分は書かれていません。
そして、江戸時代の文献を調べてみると、どれも同じ内容の本はなく、それぞれ書いてある内容が違います。
ある本は、方位と日取りについて書いてあり、ある本は、日取りのみだったり、ある本は、使う数字が3つだけなのに、他の本では、4つ5つだったり、7つなんて言うのもあり、先天に基づいているもの、後天に基づいているものなど、どれも内容が違います。

そして、まず「陰陽五陽奇書」が初めて日本で紹介されたのが、寛政6年(1794年)です。丁度、後に天保の改革をした水野忠邦が生まれた年です。ですから江戸時代も終盤の頃です。
これは、「陰陽五陽奇書」が中国の清王朝時代の乾隆56年(1791年)に出版された3年後です。ですから、それなりに、「陰陽五陽奇書」も早い段階で輸入された様です。そして、それから1811年、1841年と日本で出版されて行くのですが、それに対して「簠簋内傳金烏玉兎集」の別冊本の様な今回色々と調べた本は、皆1680年代から出版されています。

ざっと見て行くと
簠簋内傳諺解大全 5巻 中野宗左衛門, 天和2 [1682]
簠簋秘决傳 小泉松卓 [著] 享保3 [1718]
簠簋秘伝抄 延宝5 [1677]
簠簋秘決伝 小泉松卓 享保3 [1718] 跋
簠簋袖裏集捷徑 壽岳瞳夷 [編] 享保2 [1717] 跋
簠簋掌中口伝書 太田平右衛門, 天和1 [1681]
簠簋口伝初心鈔 2巻 盛典 [著] 元禄4 [1691] 序
簠簋冠註大全 5巻 盛典 [著] 元文6 [1741] 跋
簠簋抜伝記 2巻 破扇 刊, 延宝8 [1680] 奥書
安部晴明簠簋内伝図解 柄沢照覚 著 神誠館, 明45.2
と言った感じです。
つまり古いものだと、「陰陽五陽奇書」より100年早い出版になります。
ただ、「陰陽五陽奇書」も「選擇叢書集要」という名前でしたら、1632年に明王朝時代で一度出版されていますが日本には入って来ていません。

そして、この「簠簋内傳金烏玉兎経」は、一応安倍清明の著書と言うことになっていますが、実際は、安倍清明が陰陽道の大家で鬼神を使役して諸種の奇術をやった人と伝えられていたため、室町時代に安倍清明の名を借りて作られた偽作の様で、作者不詳です。
そしてここで出て来る別冊本は、簠簋内傳金烏玉兎集の解説本の様な存在です。
簠簋内傳金烏玉兎集に色々と細かく書いてないので、それを補う形の内容の本で基本それも暦の本です。
それににしても、江戸時代中期の民間に「九図之名義」の様な占い(1~9迄の数字を使い、基礎に河図、洛書がある様な日取りや方位の占い)があったと言うことは、ルーツは、もっと遡るものであるのでしょう。ただ、これはどこまで文献が残っているかはわかりません。当然、豊臣秀吉の陰陽師弾圧も途中あったことも影響しているでしょう。そして考えられるのは、この出版された時代が早いものは1680年代だということです。大阪夏の陣があったのが1615年であり、第一次鎖国令が出たのが1633年であり、1680年代は、水戸光圀公が水戸藩の藩主になったばかりの時代ですので、この時代にこの様な内容の本が民間で輸入されたとは考えられにくいと思います。ですから、江戸時代より前に何等かの形で中国から渡って来たものが、長い年月をかけて日本化して民間に伝わり、江戸時代中期に広まった。しかし、それからしばらくすると、中国の最新の占術が入って来たので、そっちに取って変わられたため、衰退してしまった、そしてそれが九星術となり、気学、干支九星術へと発展していったということなのではないでしょうか。ですから、気学や干支九星の源流は大きく二つは、あったのだと考えます。
そして簠簋シリーズを見てわかったのは、確かに諸説あり、本によって違うところはありますが、今の気学や干支九星、遁甲のルーツの一つであると思えることです。(これはあくまで私の主観です。)
これは読んで見ないことには実感するのはなかなか難しいかもしれませんが、私はそう感じました。
星の言い方や、盤の出し方は独特なものがありますが、基本は、相生、相尅、比和を重視しています。本来、この様なものも大切にしていかないといけないのかもしれません。
今自分たちが使っている占いのルーツの一つなのですから。

因みにこの九図の名義は、簡単に言うと、占う人の年齢や干支、納音五行、用いる年月日を元にして数字を計算して基本となる数字を出します。そしてそこから色々なルールで八方に名義を配置して大方は、中宮の名義との相生、相克、相加(比和)を見て行きます。そして日取りの場合は、相克の場合は、数字を加えて相生や相加になるまで同じことを繰り返して良い日を出すと言う様なことをします。(諸説あり)
面白いです。でも何故今までこの様なものが、出て来なかったのでしょうか?不思議です。
最後に文献が崩し字でかかれていなくてよかったです。漢文ならなんとかかるので。

 

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